疾患や症状について

◆気分が落ち込む、元気がない
気分の落ち込みや元気がない事は、人がしばしば抱くごくありふれた心的状態です。頻繁に起こる事であるため、いつもの事で済むし回復の経験もあるためそのうち治ると考えがちです。普段はそれでいいのですが、長引いている、普段より悪く思う時でもその異変に蓋をして無理をしてしまうということはあります。「うつ病」、「うつ状態」での抑うつ症状はそういった事が多く、ご自身が思うよりは早めに相談、受診をした方がいいのかもしれません。

◆動悸がする、胸が苦しい、吐き気がする
上記の気分の問題が長引いてくると、動悸や胸部痛、嘔気、腹痛などで体の方からSOSが発せられる事があります。よくある事ですが、そのような症状が出る時点であっても気分の問題に無自覚な場合もあり、体調の問題だと思ったり、内科などに受診し検査などしても問題なし、もしくは「自律神経失調症」という診断になることもありますが、「うつ病」など背景となる疾患がある場合もあります。そのような症状があり、何か因果関係を感じるストレスなどがあるのであれば、精神的問題の発露であるという認識を持った方がいいかもしれません。

◆落ち着いて考えられない、考えがまとまらない
落ち着いてものを考えられない、焦ってしまって考えられない状態などは「うつ病」や「統合失調症」などやそれ以外にもよく見られる状態です。公私に渡って生活の上でこの症状が出ると判断を誤り、のちに禍根を残すこともあります。まずは落ち着いて深呼吸、でなんとかなる場合もありますが、精神力ではどうしようもない時もあります。非常に制御し難い動的な状態であるため、もとの病気はなんであれまずは落ち着くことを優先した方が良いこともありますから、これに関しては早めの受診をした方が良いとおもわれます。

◆眠れない、途中で目が覚める
睡眠の問題は多くの人が多少は経験していることだと思います。眠れない事については「うつ病」や「不安神経症」などあらゆる精神疾患が原因となることもありますし、不安や緊張などの本人の心的状況、騒音などの外的要因、加齢や身体疾患などの身体要因など、と様々な原因が複合的に絡んでいる事もありますから、「不眠症」と一概に言えないところがあります。背景に疾患はないか、ストレスはないか、年齢なども加味して総合的に判断し、薬物療法のみならず生活改善に取り組む、睡眠自体には拘らない考え方も出来るようになる、などすると楽になります。睡眠の問題としては「過眠症」、「睡眠リズム障害」など他にもあります。症状としていいのか大丈夫なのか分からない問題なら一度ご相談してみることをお勧めします。

◆仕事や学校に行きたくない、趣味を楽しめない
文字にすると取るにたらない事に思われますが、「うつ状態」の一歩手前でみられることがしばしばあります。プチ遅刻する、遅刻までは行かないけど始業ギリギリで到着するなど、意識的ならまだしも無意識でそうなってしまっている場合もあります。趣味など自分の好きなことであってもやはり知的活動であるので精神的に弱っていると負担や苦痛に感じることがあります。以前は普通に観ていたテレビをうるさいと感じる、なども精神的に疲労しているかもしれません。それぐらいで病院行かなくてもいいんじゃないか、と思うのは当然ですが、そういう兆しである場合もあることは頭に入れておき、悪化する、他の症状が出るなどあれば考えた方がいいかもしれません。

◆周囲と上手くやっていけない、生きづらいと感じる
コミュニケーションがうまく出来ない、雑談が出来ない、不用意な一言で揉めてしまった、一生懸命しても仕事が覚えられない、よく怒られるが何故かわからない、などコミュニケーションや理解力にまつわる諸問題があります。相手からの言葉含めた情報を自身の中で理解する過程で問題がある場合があり、ときに「神経発達症」、「自閉症スペクトラム障害」、「広汎性発達障害」といった特性が心理検査などで明らかになる事があります。何がどのように良くなくどこが良いかを知る事は、ご自身のセルフマネジメントや、自分に合う環境探し、現在の環境の調整、就労支援などのサービスの利用などを考える上で大きな助けになると思います。診断がついたとしてどうすれば良いか、という点に関してもご自身の意向を勘案してロードマップを示すことはできるかと思います。

◆集中力がない、うまく段取りができない、衝動的な行動
集中力がない、もしくは集中しすぎてしまう、集中の振り分けが苦手、といった集中力の問題、そこからのタスク処理の問題は誰しも多少はある問題ですし、心身のコンディションによる変動もあります。副次的な問題として「うつ病」や「神経発達症」周辺、その他様々な事の背景とすることもありますが注意と多動を主症状とした「ADHD」とされることもあります。ご自身の行動修正や適した環境を得る事で症状からのストレスを減らす事を考える、場合によっては薬物療法などを行なっていますが、その前に子供、学生の頃などの情報聴取や心理検査など然るべき検査を受けてから治療することをお勧めします。

◆もの忘れをする、確認してしまう
もの忘れをする事は単に記憶を障害されているか否かという問題ではなく、複合的な要因で起こるものです。いわゆる「アルツハイマー型認知症」、「血管性認知症」などの認知症性疾患のそれはもちろんですが、そのほか身体疾患による場合、注意や記憶保持の問題、単純に関心の問題もあります。どこに問題があるかはやはり明らかにした方が良いと思われます。加齢による物忘れについては認知機能検査を受け、問題あれば画像診断など上位診断に進んでいきます。またもの忘れや注意の問題などに付随することもありますが、確認を何度もしてしまう状態もあります。「うつ病」など病気や疲労など注意に欠ける状態である可能性もありますが、馬鹿げていると自分でも思うが確認行為や湧き上がる悪い考えを止められない、「強迫性障害」といわれる病気もあります。知り合いには相談できず隠してしまいがちですが、病院では病気の事ですので普通にお話ししてもらって治療や対策を考えることは出来ると思います。

◆イライラが制御できない。
イライラするのいうのも1日数回はあるであろうごくありふれた心的反応の一つかと思います。動物で考えると危機回避能力に関連したところでありますので大事なものではあるのですが、人間の社会生活においては邪魔になることが多々あります。イライラが昂じて人間関係や社会的立場に傷がつくこともあり、イライラの強さやそのエスカレートが問題と自身で思われるのであれば、何かした方が良いかもしれません。イライラする事があってイライラするのは仕方がないですが、アンガーマネージメントを取り入れる、内服治療を並行するなどして自制の効く範囲まで抑えることは可能です。また感情の不安定さがある病気、例えば「うつ病」、「双極性障害」、「気分変調症」などを併存する場合はしっかりとした感情の安定を治療に取り入れた方がいい場合もあります。

◆不安感を制御できない
不安もイライラと同じくありふれた心的反応で、これもまた危険回避のためには必要なものですが、生活に支障を呈する事も前段と同じく多くみとめます。不安にも漠然と長く続くものから、場面によって急激に立ち上がるものなど多岐にわたります。動悸や過呼吸など発作的な症状を起こすものは「パニック障害」と言いますが、なった人にとっては死ぬかのような恐ろしい体験となりますので、同じ状況、同じ症状がまた起こるのではないかとベースの不安が高まり、また発作が起こりやすくなる悪循環を呈する事が多いです。悪循環をなくす意味での応急の治療、中長期的な軽減を目指した治療、その両方、を病状やご希望に応じて選択します。「不安神経症」、「社会不安障害」、「全般性不安障害」などについても内服治療、非薬物的アプローチを選択、並行して治療をしています。

◆職場がきつい、休みが取れない
仕事がどうというのは自身の環境問題ですが、やはり良くない環境に身を置くと心身に変調をきたしやすくなります。昨今の労働環境は最低人員、また欠員状態であるところも多く、個人あたりの時間的量的負担が増えている所も散見されます。隠れ残業や持ち帰りの仕事などもあったりで額面上の勤務時間を超えることもあるほか、余裕のない職場はギスギスしがちです。職場でのストレスの一番大きなものは労働内容そのものよりも人間関係とされています。医療的にも法的にも枠組みはあるのですが、自分の知る環境だけで考えてしまうと判断がつかない場合もあります。やはり日々の生活の中である程度ダラダラ過ごす時間、言い換えればリラックス、クールダウンの時間が必要であると思っています。不調が悪化すれば「うつ状態」、「適応障害」などの診断がつきますが、改善のためにはまず仕事環境を考えないといけない場合もあります。職種や会社ローカルの事情、ご自身側の要因などを検討し、ご本人の不調が強い場合は休職などを含めたマネジメントが必要です。

◆やめたいのにやめられない
「アルコール依存症」、「ギャンブル依存症」などは有名ですが、最近はソシャゲなど「ゲーム依存」、「ネット依存」「買い物依存」なども問題になっています。「過食症」なども部分的にその範囲に入るかと思います。各論は避けて総論としてのお話をすればこれらに通底する問題は依存することによって身体的、時間的、経済的な支障を生じる事です。治療の前提としてまず止める意思を持つ事が大事で、病院で出来ることはそのお手伝いとなります。なぜ依存しているかに向き合う事と、止めることでのメリットや障壁について考え、依存しているものに使っていた時間の置き換えなどを考えていきます。止めている状態が日常となるまで、止めている時のイライラや不安に薬物療法を含めた対処を考えていきましょう。依存に戻ってしまっても治療道半ばと考えて何度でもトライする事が大事です。

◆人の声が聞こえる、考えが抜き取られている気がする
五感で世界を感じて自分自身の頭で考える、という行為は完全に自分自身のもので間違いないのですが、時にそうでなくなってしまう状況もあります。また自身の主観の問題でもあり、おかしいと感じにくい、おかしさの原因を外界に求めてしまう事もあります。こういった状態は「統合失調症」やその類縁疾患、「うつ病」などその他の疾患でも見られる事があります。ご自身の生活の周囲の人達には理解され難く、軋轢や距離が急激に出来てしまうこともあります。何かがおかしいと感じる、それが勘や感覚的なものでも病院に相談された方がいいかもしれません。そういった症状のある方の心配している周りの方なら、本人の主観的見地は尊重した上で、自分が心配している事や、不眠やイライラ、「ノイローゼ」など周りから分かる状況を伝えて受診を促されると良いかもしれません。

◆薬を減らしたい
どんな病気にも好不調はあり、その治療には紆余曲折があります。その中で内服の量や種類が増えていく事は往々にしてあります。治療歴もまた歴史であり、そこにはそうならざるを得ない事情があったと思いますが、薬を減らす、整理しつつ治療を行う事も考えてよい場合もあります。個人的には薬の種類と量は少なく、用法も単純明確である方が良いと感じていて、診療もそういうスタンスで行っております。内服の減量はご本人の希望があれば、時間をかけて慎重に、非薬物的な取り組みを併用して行なうように心掛けています。そのような希望のある方はご相談下さい。

◆病院に行きたくない、病院に行ってくれない
病院に行く行かないは基本的に本人の意向を尊重するべき事であり、周りの方も私人ですから強制力はなく、無理やりというのは現実的ではありません。ある程度、ご自身の問題として捉えてからがスタートとなります。たとえ部分的でも治療に協力して頂けない場合は強制入院以外は治療ができないのが現状です。心配する周りの方にもその辺りはご留意頂き、その上で何か考えたい方は、行政機関や病院などに家族相談の形で行かれると良いかと思われます。また大枠の症状では無くても本人が困っていると感じている事には治療の意思がある場合もあり、そこからまず受診を勧めてもいいかもしれません。なにより私はあなたを心配している、ということを伝えることが大事で、その場では拒否されても後々の信頼や感謝に繋がります。

◆自分のことは自分でわかっている
自分の事は自分で分かっているし他人にやいのやいの言われるのは好きじゃない、人にはやいのやいの言うけど・・・、自己中心的ではありますが、それが自己というものです。何かわからないけど何かおかしい、自分が正しいのか分からない、家族や友人から心配される・・・。他人の声に耳を傾ける事はして聞ける所は聞く、なにより自分の内なる声を聞く事で問題があると思えば病院に行っても良いのかもしれません。皆さんが自分を中心として世間様とそこそこ渡り合える状況に行くことへの道標となれればと思います。